2月
03
2013
事業再生について、私が関わった事案について紹介します(守秘義務
の関係で詳しくは紹介できませんが)。
それは、自己破産と事業譲渡を組み合わしたスキームでした。
自己破産と事業譲渡というと、少し耳慣れないかもしれません。
とある木材の販売企業(A社とします)が、安い輸入木材に押され、需要
の落ち込みもあり経営不振に陥り、熟慮の結果やむをえず自己破産の
申立をすることになりました。
しかし、A社の優良な部門や資産が切り売りされてしまうと、価値が
著しく下落してしまい、今まで勤めてきた腕のいい職人たちも離職となる。
そこで、つきあいのあった同業他社に事業譲渡をすることになりました。
具体的には、以下の流れで事業譲渡がすすみました。
① A社が裁判所に自己破産の申立→管財人が選任
② 管財人と協議した上で、A社の一部を事業譲渡
③ 譲渡代金は管財人へ→配当原資
破産と事業譲渡・不動産譲渡スキーム
さらに、A社の代表者は、A社の債権者(金融機関)の連帯保証人と
なっており、自宅の土地建物は金融機関の抵当権が設定されていま
した(中小企業の場合、代表者の個人保証と自宅に抵当権設定がなさ
れることがおおいと思います)。
A社の代表者自身も自己破産となったのですが、自宅の土地建物は
事前に親族に協力を要請した上で、管財人の許可を得て任意売却
をすることができました。
このスキームの主なメリットは2点です。
・A社の優良事業を同業他社に譲渡し、事業を生かすことができたこと
(結果、A社の従業員の雇用を守ることができた)。
・A社代表者の自宅を親族に任意売却することにより、代表者とその家族
の生活を守ることができた。
ただ、自己破産という最終的な事態にまで陥ってしまったことは、やはり
デメリットは大きいといえます。
今にして思えば、自己破産せざるを得ない、そうなる前に事業再生の手段
について検討できればよかったと思います。
事業譲渡のスキームの参考になればと思います。
2月
03
2013
2013年2月3日付け日経新聞朝刊の社会面に、「太陽光発電パネル
設置 学校屋根貸し出し 愛知県が企業に」という見出しの記事がありま
した。
記事によると、愛知県は2013年度から県立学校などの公共施設の
屋根を太陽光パネルの設置場所として民間企業に貸し出すとのこと。
具体的な賃料や対象はこれから詰めるとのことです。
最近、地方自治体が保有している土地について、メガソーラー事業へ
の活用がよく話題になります。
当ブログの太陽光発電と契約①で書いたように、太陽光発電において
は「場所の選定」が決定的に重要です。
そして、地方自治体が保有している土地などの公有財産については、
一般の土地建物とは異なる、特有の問題があります。
地方自治法上、公有財産はふたつに区分されます。
①行政財産:行政目的のために保有しているもの
②普通財産:①以外のもの
①行政財産である土地・建物は、原則として私権の設定が禁止され
るため通常は「使用許可」によることになります(地方自治法238条の4)。
また、「使用許可」を得たとしても、通常、1年更新であることが多いため
長期間の利用を前提とする太陽光発電事業の実施のためには安定的
とはいえないでしょう。
他方で、②普通財産の土地・建物であれば、私権の設定に制限はあり
ません。
ただ、通常は、各自治体の条例において財産管理規則が定められて
おり、賃貸借の期間を短期に定め、更新を要する場合が多いといえます。
加えて、①行政財産の使用許可、②普通財産の賃貸借いずれも、公用
の必要による許可取消または解除が法律上認められています(地方自治
法238条の4第9項、同238条の5第4項)。
太陽光発電は、長期間での安定的な場所の利用が前提となりますの
で、公有財産においては、特有の問題について十分に検討する必要が
あります。
2月
02
2013
平成25年2月2日付け日経新聞の中部経済の欄に「円滑化法終了、
中部への影響は」と題する記事が掲載されていました。
中小企業の資金繰りを支援する目的で施工された中小企業金融円滑
化法は、本年3月末に期限を迎えます。
記事によりますと、本年の企業倒産の件数は、昨年と同程度か微増
程度で落ち着く見込みとのことです。
ただ、当事務所には、昨年から毎月平均5件程度、企業倒産や事業
再生に関する相談を受けております。
早期に相談を受け、事業の再生に至った中小企業もありますが、相談
にくるタイミングが遅く、法的手続きをとったケースもあります。
~~
その中で特徴的だったのは、経営不振企業であっても、優良部門や
入手困難な優良資産が存在する場合は、事業譲渡による再生型M&A
スキームにより、優良部門を再生するというケースが増えています。
具体的には、以下の通りです。
ステップ① スポンサーによる受け皿企業の準備
ステップ② 経営不振企業が、優良部門を受け皿企業に事業譲渡
ステップ③ 受け皿企業が譲渡代金を支払う。
ステップ④ 経営不振企業は、特別清算または破産処理
これらのスキームを図表にまとめましたのでご参照下さい。
事業譲渡による再生型M&Aスキーム 図表
これらのスキームにより、優良部門の消滅や資産の散逸などを防ぎ、
また従業員の雇用を守ることもあります。
もちろん、破産管財人による否認権の要件に十分に注意しながら、事業
譲渡を適切に行います。
その際、もっとも重要なことは、スピード(早期に専門家の相談を受け
ること)と受け皿企業の準備です。
とくに、時期を逸してしまうと、事業価値が下がり、また資産が毀損する
場合があるため、早めに専門家に相談をうけることをおすすめします。