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2011年5月

5月 16 2011

増えてます!労働審判

 平成23年3月、愛知県より平成22年度刊愛知県統計年鑑が出され(出典:愛知県のホームページ)、その「司法・警察」の章によりますと、名古屋地方裁判所での労働審判件数は、以下の通りです。

 

平成18年   54件
平成19年  111件
平成20年  124件
平成21年  275件

 

 平成18年に新設された労働審判手続きは、新設後から増加傾向ですが、とりわけ平成21年に大幅に申し立て件数が増加しました(前年比で倍以上)。

当事務所でも、企業側からの労働審判の対応に関するご相談が増えています。

 ここで、労働審判手続きの概要を紹介します。

 まず、労働審判は、個別の労働関係民事紛争に関して、労働審判委員会(裁判官である労働審判官1名と労使の労働審判員2名で構成)が、事件を審理して、調停を試み、調停が成立しない場合には労働審判を行う手続です。

 労働審判には、一般的に3つの特徴があると言われています。

 

①裁判官のほかに、労働関係に関する専門的な知識経験を有する労働審判員が事件の審理や判断に加わるという、専門性。

 

②原則3回以内の期日で審理を終結させるという、迅速性。

 

③調停を試みて、調停が成立しない場合には、権利関係を踏まえつつも事案の実情に即した解決を図るために相当な労働審判を言い渡せるという、柔軟性。

 

 とりわけ重要なのは、②の迅速性でしょう。原則3回以内で審理集結となるため、たしかに早いです(1回の期日において要する時間は、通常は1時間以上。1回の期日において十分に時間をかけて主張を尽くし、証拠を提出し、調停に向けた話し合いを進めます)。

 他方、労働審判を申し立てられた企業側にとっては、3回で審理集結という原則をにらみつつ、第1回期日に提出する答弁書において十分に主張を尽くすことが重要となります。

 

 次に、労働審判手続きの対象は、「個別労働関係民事紛争」に限られますが、解雇・配転・降級の効力を争う紛争や、賃金・退職金・解雇予告手当・時間外手当(残業代)・損害賠償などを請求する紛争など、「労働関係に関する事項」に関する紛争であればいいので、従来からの民事訴訟では解決が困難であった紛争(例えば、有給休暇の繰り越し確認、自宅待機命令など)も対象となります。このように、労働審判の間口は広いといえるでしょう。

 このように、間口が広く、終結までが早いという労働審判は、今後も増加するのではないかと思います。

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5月 06 2011

不正競争防止法の改正と営業秘密の保護強化①

 当事務所では、最近、「我が社から独立した従業員が新会社を設立し、勝手に我が社の営業秘密を持ち出して新会社の営業に利用している」といった相談が増えています。

 営業秘密を保護するために、どのような措置が考えられるでしょうか?

 この点、平成21年、不正競争防止法が改正され、営業秘密の保護強化を目的として「営業秘密侵害罪」の処罰範囲が拡大されました(平成22年7月施行)。

 
 改正のポイントは、以下の2点です。

 
①目的要件の拡大(不正競争の目的から、図利加害目的への拡大)

②営業秘密の領得行為に対する刑事罰の拡大

 
 まず分かりやすいのは、①です。
 
 改正前は、同業他社などがビジネスを有利に進める目的(不正の競争の目的)で営業秘密を不正に取得した場合が処罰対象とされていました。
 しかし、それでは営業秘密の保護に欠ける場合があるため、改正法では、いわゆるカネ目当てや恨みをはらすためなど営業秘密の保有者に「損害を加える目的」(図利加害目的)があれば処罰の対象になりました。
 
 平成23年1月14日の日経新聞によりますと、遊具販売会社に「嫌がらせ」をしようと業界団体のサーバーに侵入し、営業秘密である同社の流通情報を不正に取得したとして、警視庁は東京都内の会社社長を不正競争防止法違反(営業秘密侵害罪)などの疑いで逮捕したとのことです。
 これは、営業秘密の侵害行為の対象範囲を拡大した改正法施行後、全国初の適用となったようです。
 改正前であれば、「不正競争の目的」がない、ということで不正競争防止法違反の適用はなかったと思われます(業務妨害等の他の問題はあり得ます)。
 
 次に、②営業秘密の領得行為に対する刑事罰の拡大についてですが、この点は後日また紹介します。

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