5月 06 2011
不正競争防止法の改正と営業秘密の保護強化①
当事務所では、最近、「我が社から独立した従業員が新会社を設立し、勝手に我が社の営業秘密を持ち出して新会社の営業に利用している」といった相談が増えています。
営業秘密を保護するために、どのような措置が考えられるでしょうか?
この点、平成21年、不正競争防止法が改正され、営業秘密の保護強化を目的として「営業秘密侵害罪」の処罰範囲が拡大されました(平成22年7月施行)。
改正のポイントは、以下の2点です。
①目的要件の拡大(不正競争の目的から、図利加害目的への拡大)
②営業秘密の領得行為に対する刑事罰の拡大
まず分かりやすいのは、①です。
改正前は、同業他社などがビジネスを有利に進める目的(不正の競争の目的)で営業秘密を不正に取得した場合が処罰対象とされていました。
しかし、それでは営業秘密の保護に欠ける場合があるため、改正法では、いわゆるカネ目当てや恨みをはらすためなど営業秘密の保有者に「損害を加える目的」(図利加害目的)があれば処罰の対象になりました。
平成23年1月14日の日経新聞によりますと、遊具販売会社に「嫌がらせ」をしようと業界団体のサーバーに侵入し、営業秘密である同社の流通情報を不正に取得したとして、警視庁は東京都内の会社社長を不正競争防止法違反(営業秘密侵害罪)などの疑いで逮捕したとのことです。
これは、営業秘密の侵害行為の対象範囲を拡大した改正法施行後、全国初の適用となったようです。
改正前であれば、「不正競争の目的」がない、ということで不正競争防止法違反の適用はなかったと思われます(業務妨害等の他の問題はあり得ます)。
次に、②営業秘密の領得行為に対する刑事罰の拡大についてですが、この点は後日また紹介します。