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3月 17 2015

コスプレと著作権 ③ パロディとコスプレ

コスプレと著作権に関して、今回は「パロディ」に対する法規制を考えてみます。

「パロディ」とは何か?という問は非常に難しいですが、ここでは広く「既存の著作物を何らかの形で自己の著作物として利用しているもの」とします。
二次的創作物、という表現をする場合もあります。

ですので、前回のコスプレと著作権②で説明した、典型的なコスプレのケースも、「パロディ」に含まれます。

さて、昨年(2014年)8月、「ハイスコアガール」という漫画をめぐって、著作権違反による警察の捜索が行われ、ニュースなどで報道されました。

「ハイスコアガール」を出版した会社(TVゲームで知られ、出版事業も営む)の本社などが、8月2日に大阪府警の家宅捜索を受けたというもの。
同社が発行する漫画「ハイスコアガール」が、著作権侵害の疑いがあるというのが理由です。
大阪のゲーム会社が、「自社が著作権を持つゲームキャラクターを無断で使っている」として刑事告訴した結果でした。

「ハイスコアガール」は90年代のゲームセンターを舞台に、少年少女の恋愛を描くラブコメディー漫画で、実在のゲームが登場するのが特徴です。
そして、漫画の中で大阪のゲーム会社が著作権を有するゲームが登場していました。

もちろん、「ハイスコアガール」のケースが、そのまま典型的なコスプレのケースに妥当するとは思われません。
その理由は、コスプレはあくまでも個人の趣味の範疇で楽しむ、という前提があるので、商業誌に掲載される漫画とは異なると言えるからです。

このような「パロディ」は、「個人の趣味で創作された」場合(コスプレや同人誌)は、刑事告訴がなされても実際に強制捜査まで実施されるかどうかは微妙です。

たしかに「パロディ」であっても、著作権違反となる可能性が高いことは事実です。

しかし他方で日本のアニメが世界から注目され、コスプレや同人誌の盛り上がりがそれを支えていることも事実です。

このような中で、名古屋では多くのコスプレイベントが開催されています。
行政をあげてコスプレを応援している、という状況と言えます。

そして、コスプレイベントの主催者が、ホームページの注意書きなどで第三者とコスプレイヤーとのトラブルは当事者間で解決するものとして、主催者は責任を負わないと明示している場合が見受けられます。
しかし、コスプレイベントの主催者は、イベントの入場料や参加料を徴収する場合もあり、コスプレが著作権違反の可能性があることを知っている場合もあるでしょう。

それであっても、主催者は、著作権者とコスプレイヤーが著作権を巡って争いになった場合に一切責任を負わないのでしょうか?

コスプレに関して想定されるトラブルは、大きく分けて二つあります。
① コスプレの内容について著作権者からクレームが出た場合(たとえば、衣装の内容が過激で不快をあたえるもの など)
② コスプレにより経済的利益を得た場合(たとえば、非常に人気が出たコスプレ衣装を大量に制作して販売する など)

このように、趣味の範疇とはいえ、著作権者に不快を与えたり、経済的損失を受けるおそれを発生させた場合、トラブルに発展するおそれがあります。

そのため、主催者側においても、トラブルを未然に防ぐために参加規定を明示するなど、一定の対策が必要ではないかと考えます。

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2月 28 2015

コスプレと著作権 ② ~著作権の内容である、翻案権

さて、コスプレと著作権の続きです。

まず、「著作物」とは、簡単に言うと「思想または感情の創作的表現」です(著作権法第2条1項1号)。

アニメのキャラクターも、「著作物」に含まれます。

では、アニメのキャラクターを真似て、自ら衣装を作成し、自ら着用して(かつらやメークも行い)公共の場所を歩く、という典型的なコスプレは著作権法に違反するのでしょうか??

アニメのキャラクターを生み出した著者は当キャラクターの著作権者となりますが、著作権の内容として、著作物を「変形」させたりするという翻案権があります(著作権法27条)。

ですので、当アニメのキャラクターを「変形」させることは、著作権(の内容である翻案権)を侵害するおそれがあります。

したがって、典型的なコスプレは、著作権法に違反するおそれがあります。

※もちろん、自ら新しいキャラクターを考案して、その衣装を着用して公共の場所を歩くことは、なんら著作権法違反ではありません。

ただ、ある有名なアニメのキャラクターやそのアニメの世界観に影響されて、新しいキャラクターを考案した、という場合には「グレー」な場合あるのではないかと考えられます。

では、著作権法違反するコスプレの場合に、どのような問題があるでしょうか?

一番大きな問題は、著作権法違反として刑事罰が科されるという点かと思われます。

この点は、大きく2つに分けて考える必要があります。

① 自らアニメキャラクターを真似た衣装を作り、自らの着用する。

② アニメキャラクターを真似た衣装を大量に作り、第三者に販売する。

②のケースは、よく刑事罰を受けたり、強制捜査を受けたりということが、最近でも話題になります。

では、①のケースはどうでしょうか?(実際、典型的なコスプレは①のケースです)

このケースで刑事罰が科されることは少ないのではないか、と感じています。

その理由は、現状の著作権法の刑事罰の大部分が「親告罪」であるため、著作権者が刑事罰を科してほしいと申告しない限り、捜査すら開始しないからです。

実際上、アニメの著者としても、ファンの方々が自ら衣装を作成して、楽しみとして着用するという範囲にとどまるのであれば、刑事罰を科してほしいと申告はしないと考えられます。

ただ、最近、著作権法の親告罪という規定をやめて、すべて非親告罪とする改正の動きがあるようです。

仮に、そのような著作権法の改正がなされると、今までは、ある意味ではコスプレに対して寛容だった状況が終了し、コスプレ会場で告訴が乱発するという事態を招きかねないと危惧されます。

今後の著作権法の改正とコスプレを巡る動向に注目していきたいと考えています。

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2月 18 2015

コスプレと著作権 ① ~ある行政機関(地方自治体)からの相談

久しぶりにブログを更新します。

最近、「コスプレ」に関する相談が増えています。

「コスプレはマニアの世界」というのは一昔前の話。

最近は、ハロウィンのときにコスプレで街を歩くという光景も珍しくなくなりました。

また、地方の行政機関(地方自治体)や市民団体がコスプレ大会を主催して、一種の「まちおこし」のような大会とすることも増えています。

けれども、私自身は著作権の事件を扱う中で、漠然と「コスプレって本当に著作権法に違反しないのかな」と思っていました。

そうしたところ、ある行政機関(地方自治体)から、「コスプレは、著作権法に違反しませんか?」と真正面から相談してきたのです。

次回以降、コスプレと著作権について、ディープに考えていきたいと思います。

ご不明な点などありましたら、是非ご相談下さい。

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2月 03 2013

円滑化法終了と再生・倒産 ②破産と事業譲渡スキーム

 事業再生について、私が関わった事案について紹介します(守秘義務

の関係で詳しくは紹介できませんが)。

 それは、自己破産と事業譲渡を組み合わしたスキームでした。

 自己破産と事業譲渡というと、少し耳慣れないかもしれません。

 

 とある木材の販売企業(A社とします)が、安い輸入木材に押され、需要

の落ち込みもあり経営不振に陥り、熟慮の結果やむをえず自己破産の

申立をすることになりました。

 しかし、A社の優良な部門や資産が切り売りされてしまうと、価値が

著しく下落してしまい、今まで勤めてきた腕のいい職人たちも離職となる。

 そこで、つきあいのあった同業他社に事業譲渡をすることになりました。

 具体的には、以下の流れで事業譲渡がすすみました。

  

 ① A社が裁判所に自己破産の申立→管財人が選任

 ② 管財人と協議した上で、A社の一部を事業譲渡

 ③ 譲渡代金は管財人へ→配当原資

 破産と事業譲渡・不動産譲渡スキーム

 

 さらに、A社の代表者は、A社の債権者(金融機関)の連帯保証人と

なっており、自宅の土地建物は金融機関の抵当権が設定されていま

した(中小企業の場合、代表者の個人保証と自宅に抵当権設定がなさ

れることがおおいと思います)。

 A社の代表者自身も自己破産となったのですが、自宅の土地建物は

事前に親族に協力を要請した上で、管財人の許可を得て任意売却

をすることができました。

 

  このスキームの主なメリットは2点です。

・A社の優良事業を同業他社に譲渡し、事業を生かすことができたこと

(結果、A社の従業員の雇用を守ることができた)。

・A社代表者の自宅を親族に任意売却することにより、代表者とその家族

の生活を守ることができた。

 ただ、自己破産という最終的な事態にまで陥ってしまったことは、やはり

デメリットは大きいといえます。

 今にして思えば、自己破産せざるを得ない、そうなる前に事業再生の手段

について検討できればよかったと思います。

 事業譲渡のスキームの参考になればと思います。

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2月 03 2013

太陽光発電と契約 ②公共施設の屋根貸し

 2013年2月3日付け日経新聞朝刊の社会面に、「太陽光発電パネル

設置 学校屋根貸し出し 愛知県が企業に」という見出しの記事がありま

した。

 記事によると、愛知県は2013年度から県立学校などの公共施設の

屋根を太陽光パネルの設置場所として民間企業に貸し出すとのこと。

具体的な賃料や対象はこれから詰めるとのことです。

 最近、地方自治体が保有している土地について、メガソーラー事業へ

の活用がよく話題になります。

 当ブログの太陽光発電と契約①で書いたように、太陽光発電において

は「場所の選定」が決定的に重要です。

 そして、地方自治体が保有している土地などの公有財産については、

一般の土地建物とは異なる、特有の問題があります。

 地方自治法上、公有財産はふたつに区分されます。

①行政財産:行政目的のために保有しているもの

②普通財産:①以外のもの

 ①行政財産である土地・建物は、原則として私権の設定が禁止され

るため通常は「使用許可」によることになります(地方自治法238条の4)。

 また、「使用許可」を得たとしても、通常、1年更新であることが多いため

長期間の利用を前提とする太陽光発電事業の実施のためには安定的

とはいえないでしょう。

 他方で、②普通財産の土地・建物であれば、私権の設定に制限はあり

ません。

 ただ、通常は、各自治体の条例において財産管理規則が定められて

おり、賃貸借の期間を短期に定め、更新を要する場合が多いといえます。

 加えて、①行政財産の使用許可、②普通財産の賃貸借いずれも、公用

の必要による許可取消または解除が法律上認められています(地方自治

法238条の4第9項、同238条の5第4項)。

 太陽光発電は、長期間での安定的な場所の利用が前提となりますの

で、公有財産においては、特有の問題について十分に検討する必要が

あります。

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2月 02 2013

円滑化法終了と再生・倒産 ①事業再生スキーム 

 平成25年2月2日付け日経新聞の中部経済の欄に「円滑化法終了、

中部への影響は」と題する記事が掲載されていました。

 中小企業の資金繰りを支援する目的で施工された中小企業金融円滑

化法は、本年3月末に期限を迎えます。

 記事によりますと、本年の企業倒産の件数は、昨年と同程度か微増

程度で落ち着く見込みとのことです。

 ただ、当事務所には、昨年から毎月平均5件程度、企業倒産や事業

再生に関する相談を受けております。

 早期に相談を受け、事業の再生に至った中小企業もありますが、相談

にくるタイミングが遅く、法的手続きをとったケースもあります。

~~

 その中で特徴的だったのは、経営不振企業であっても、優良部門や

入手困難な優良資産が存在する場合は、事業譲渡による再生型M&A

スキームにより、優良部門を再生するというケースが増えています。

 具体的には、以下の通りです。

 ステップ① スポンサーによる受け皿企業の準備

 ステップ② 経営不振企業が、優良部門を受け皿企業に事業譲渡

 ステップ③ 受け皿企業が譲渡代金を支払う。

 ステップ④ 経営不振企業は、特別清算または破産処理

 これらのスキームを図表にまとめましたのでご参照下さい。

事業譲渡による再生型M&Aスキーム 図表

 

 これらのスキームにより、優良部門の消滅や資産の散逸などを防ぎ、

また従業員の雇用を守ることもあります。

 もちろん、破産管財人による否認権の要件に十分に注意しながら、事業

譲渡を適切に行います。

 その際、もっとも重要なことは、スピード(早期に専門家の相談を受け

ること)と受け皿企業の準備です。

 とくに、時期を逸してしまうと、事業価値が下がり、また資産が毀損する

場合があるため、早めに専門家に相談をうけることをおすすめします。

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1月 13 2013

太陽光発電と契約 ①賃貸物件の場合

 今年1月14日付け中日新聞の朝刊によると、賃貸の集合住宅の屋根

に太陽光パネルを載せるケースが増えているとのことです。

 再生可能エネルギーの全量の固定価格買取制度を定めた「電気事業

者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法」が、2

012年7月1日より施工されました。

 その結果、太陽光で発電された電気は、発電能力が10キロワット以上

の場合、全量を電力会社に20年間固定価格で買い取ってもらうことが

可能となりました。

 当事務所でも、太陽光発電に関する相談を受けることがあります。

 アパートなどの集合住宅のオーナーが、既存・新築のアパートの屋根

に太陽光パネルを載せ、とりわけ共用部分の電源に活用しつつ、売電に

より安定収入を図ることが可能となりました。

 ただ、太陽光パネルを共同住宅に設置する場合、以下のリスクに注意

が必要です。

① 場所の選定と光量

  太陽光による発電は場所の選定が決定的に重要となります。

  過去の天候状況の変動や、南側に高層ビルが開発されることによる

太陽光の量の減少といったリスクを十分に検討する必要があります。

② パネルの性能保証

  太陽光パネルも機械ですから、経年により劣化し、少しずつ発電能力

 が落ちていきます(メーカーによってばらつきはあります)。

  また、故障が発生した場合に、メーカーが性能(発電量)をどこまで

 保証するのか、という点も検討しておく必要があります。

  さらに、最近では、太陽光パネルの施工業者が、パネルの性能につ

いて誇大な広告をしたとして、消費者庁から措置命令という処分を受ける

という事例も発生しています。

 http://www.caa.go.jp/representation/pdf/121030premiums_2.pdf

 消費者庁のホームページから

③ 不測の事態が生じた場合の保険

  地震などの自然現象などによって太陽光パネルが破損したり、使用

 不能となった場合に備えて、保険に加入しておくべきでしょう。

④ 「光害」について

  太陽光パネルを設置する際は、パネルの反射光による「光害」に注意

 しなければなりません。

  平成24年4月18日、横浜地方裁判所は、隣接する建物に太陽光

 パネルを設置したところ、太陽光パネルの反射光が、隣地の建物に

 差し込み、通常の輝度と比較すると最大4000倍を超える輝度となる

 ことなどから受忍限度を超えているとして、太陽光パネルの撤去と

 慰謝料10万円を認容しました。

  

  これらのリスクについて十分に検討した上で、太陽光パネルを設置

するかどうかを決定すべきでしょう。

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8月 12 2011

不正競争防止法の改正と営業秘密の保護強化②

先日のブログで、平成21年、不正競争防止法が改正され、営業秘密の保護強化を目的として「営業秘密侵害罪」の処罰範囲が拡大されたことを紹介しました。

 

今日はその続きです。

 

先日紹介しましたが、改正のポイントは、以下の2点。

①目的要件の拡大(不正競争の目的から、図利加害目的への拡大)

②営業秘密の領得行為に対する刑事罰の拡大

 

②について、重要な点を紹介します。

ポイントは、従業者等による営業秘密の領得自体への刑事罰の導入、という点です。

下記のイメージ図(経済産業省 知的財産政策室「改正不正競争防止法について」から引用)をみて頂きたいのですが、改正前は、従業者等が、営業秘密を領得しただけでは、刑事処分の対象外であり、開示・使用して初めて、刑事処分の対象となっていました。

 

しかし、実際上、開示・使用されてしまうと、被害回復が困難となることなどから、改正後は、従業者等が、営業秘密の管理の任務に背いて、図利加害目的で領得した場合には、刑事処分の対象としたのです。

 

つまり、営業秘密が開示・使用される前に、刑事処分の対象となる場合があるのです。

 

 

 

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5月 16 2011

増えてます!労働審判

 平成23年3月、愛知県より平成22年度刊愛知県統計年鑑が出され(出典:愛知県のホームページ)、その「司法・警察」の章によりますと、名古屋地方裁判所での労働審判件数は、以下の通りです。

 

平成18年   54件
平成19年  111件
平成20年  124件
平成21年  275件

 

 平成18年に新設された労働審判手続きは、新設後から増加傾向ですが、とりわけ平成21年に大幅に申し立て件数が増加しました(前年比で倍以上)。

当事務所でも、企業側からの労働審判の対応に関するご相談が増えています。

 ここで、労働審判手続きの概要を紹介します。

 まず、労働審判は、個別の労働関係民事紛争に関して、労働審判委員会(裁判官である労働審判官1名と労使の労働審判員2名で構成)が、事件を審理して、調停を試み、調停が成立しない場合には労働審判を行う手続です。

 労働審判には、一般的に3つの特徴があると言われています。

 

①裁判官のほかに、労働関係に関する専門的な知識経験を有する労働審判員が事件の審理や判断に加わるという、専門性。

 

②原則3回以内の期日で審理を終結させるという、迅速性。

 

③調停を試みて、調停が成立しない場合には、権利関係を踏まえつつも事案の実情に即した解決を図るために相当な労働審判を言い渡せるという、柔軟性。

 

 とりわけ重要なのは、②の迅速性でしょう。原則3回以内で審理集結となるため、たしかに早いです(1回の期日において要する時間は、通常は1時間以上。1回の期日において十分に時間をかけて主張を尽くし、証拠を提出し、調停に向けた話し合いを進めます)。

 他方、労働審判を申し立てられた企業側にとっては、3回で審理集結という原則をにらみつつ、第1回期日に提出する答弁書において十分に主張を尽くすことが重要となります。

 

 次に、労働審判手続きの対象は、「個別労働関係民事紛争」に限られますが、解雇・配転・降級の効力を争う紛争や、賃金・退職金・解雇予告手当・時間外手当(残業代)・損害賠償などを請求する紛争など、「労働関係に関する事項」に関する紛争であればいいので、従来からの民事訴訟では解決が困難であった紛争(例えば、有給休暇の繰り越し確認、自宅待機命令など)も対象となります。このように、労働審判の間口は広いといえるでしょう。

 このように、間口が広く、終結までが早いという労働審判は、今後も増加するのではないかと思います。

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5月 06 2011

不正競争防止法の改正と営業秘密の保護強化①

 当事務所では、最近、「我が社から独立した従業員が新会社を設立し、勝手に我が社の営業秘密を持ち出して新会社の営業に利用している」といった相談が増えています。

 営業秘密を保護するために、どのような措置が考えられるでしょうか?

 この点、平成21年、不正競争防止法が改正され、営業秘密の保護強化を目的として「営業秘密侵害罪」の処罰範囲が拡大されました(平成22年7月施行)。

 
 改正のポイントは、以下の2点です。

 
①目的要件の拡大(不正競争の目的から、図利加害目的への拡大)

②営業秘密の領得行為に対する刑事罰の拡大

 
 まず分かりやすいのは、①です。
 
 改正前は、同業他社などがビジネスを有利に進める目的(不正の競争の目的)で営業秘密を不正に取得した場合が処罰対象とされていました。
 しかし、それでは営業秘密の保護に欠ける場合があるため、改正法では、いわゆるカネ目当てや恨みをはらすためなど営業秘密の保有者に「損害を加える目的」(図利加害目的)があれば処罰の対象になりました。
 
 平成23年1月14日の日経新聞によりますと、遊具販売会社に「嫌がらせ」をしようと業界団体のサーバーに侵入し、営業秘密である同社の流通情報を不正に取得したとして、警視庁は東京都内の会社社長を不正競争防止法違反(営業秘密侵害罪)などの疑いで逮捕したとのことです。
 これは、営業秘密の侵害行為の対象範囲を拡大した改正法施行後、全国初の適用となったようです。
 改正前であれば、「不正競争の目的」がない、ということで不正競争防止法違反の適用はなかったと思われます(業務妨害等の他の問題はあり得ます)。
 
 次に、②営業秘密の領得行為に対する刑事罰の拡大についてですが、この点は後日また紹介します。

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